今までもサフィの父であるジャマル国王は、自分の娘たちを他国の王と結婚させることで権力を強めて来た。

弟である第一王子のシャヒーンが国を継ぐことが決まった今、王女たちは弟の基盤作りのために次々と他国へ嫁がされていた。


「私はお父様やシャヒーンの駒ではないわ。他国へ行くなんて絶対嫌!
しかもなぜ20も30も年の離れた人と結婚しなければいけないの?これでは奴隷と同じだわ!」


一国の王たる者たちは、皆サフィよりもずっと年上の男だった。

サフィはそんな年の離れた男の元に嫁ぐのも嫌だったが、彼女がなにより嫌だったのは…


「それにハレムの女たちと一緒にされると思うと反吐が出るわ。」


国王が必ず持つハレムの女たちと再び関わらなければならないことだ。


「豪奢なハレムを持つのは国王の権力の証ですわ。」


アナスのそんな言葉にサフィの顔が不機嫌に歪む。


「あそこの女たちは本当に性格が悪いの!私が何度嫌味を言われたことか。」


ジャマル国王のハレムの女たちは確かに皆美しく魅力的であるが、欲や嫉妬に塗れ性格が恐ろしく悪かった。

始めは一人の男しか愛すことを許されない彼女たちを可哀想に思っていたサフィだったが、父王を取り合って醜い争いを繰り広げるハレムの女たちにいつの日か嫌悪感しか抱けなくなった。