そして游蘭は呉羽の方へ向き直った。

「……千霧を頼みます」

母として子を想う表情。
それは切なく、優しい。


「……お任せくださいませ。游蘭様」


迷いのない呉羽の瞳に、游蘭は満足気に空を見上げた。


「彩國と千霧の運命を──…」


それが、彼女の最後の一言となった。

次に呉羽を見たのは、游蘭ではなく、いつもと変わらぬ千霧だったから。


「私は……なぜ生まれてきたの……?どうして生きなければいけない?」


千霧のこんなに脆い表情は初めてだった。

その表情から、困惑が痛いほどに伝わってくる。


「貴方は、貴方でいる為に生きるんです」


貴方でいる為に。

誰よりも強く、生きて。


「私でいる為に……?」


「そうです。貴方自身でいる為に」