* 夜の闇は人を不安にさせる。陰の闇もまた──同じ。 「融けてしまう」 誰かが、そう言っていた。 あれは誰だったか。 紅い瞳の、そうだ。 「蒐、こんな所にいたのか。──陰の夜は冷えるな」 「否」 「平気なのか?……慣れってやつかな。私はまだ苦手だよ。ここの空気も、空も」 「……」 蒐はただ、千珠の声を聞いていた。何故かそれが、とても懐かしく、心地好く響いていたからだ。