深く詮索せず、うつむいて足元の石を蹴る。
それは、自身があまり詮索されるのを好まないという理由もあるが、それ以上を聞きたくないという気持ちもあったからだ。
「──でもね、藍」
「何?」
視線を合わせないまま、藍は返事をする。
それからややあって、千霧は言う。
「人を好きになるって、何なのかな。私には、よくわからない。──本当に、何なのかな……」
千霧の声に、胸が軋んだ。
触れたくないのに、触れないと壊れてしまうような。
「……ごめんね」
勝手に口が動いていた。
千霧はびっくりしたように藍を見つめている。
「僕も……わからない。無責任だけどさ。アイは好きだけど、それは恋じゃない。きっとおんなじだから、好きなんだ」
千霧は一言、「そう」と言って微笑んだ。



