深い意味はないのだ、と自らを必死に落ち着かせ、冷静さを取り戻す。
「千霧、そういうこと簡単には言っちゃまずいでしょー。趣味を疑われちゃうよ」
「──それはどういう意味でしょうか?」
「言葉の通りだよ。でも興味あるなぁ。千霧ってさ、好みとかあるの?」
呉羽に憎まれ口を叩いてから、藍はくるんと振り向く。
紅玉のような瞳がきらきらと輝いていて、千霧は言葉につまってしまう。
「……考えたこと無かったなぁ、そんなこと」
「何となくで良いんだよ?」
核心に迫っていく質問に、呉羽は息をのんだ。
「うーん。しっかりしていて、素直な子は好きだな」
「それって女?」
「うん、そうだよ。恋人とか、そういう意味ではないけれど、私には大切な子がいる」
「気になるなぁ、それ」



