睡恋─彩國演武─


そのうち、娼年の一人が提案した。


「姐さんの胡弓、最後に聴きたい。……これを」


娼年が差し出したのは、随分と使い込まれた古い胡弓だった。

胡弓自体は古めかしいものの、その鮮やかな装飾は実に見事だ。


「私の宝物。一度、姐さんに弾いて欲しかったの……」


「わかった。良いよ」


藍は頷いてから受け取ると、奏で始めた。

繊細な音色は、やがて聴く者全てを魅了し、皆は瞼を閉じて神経を集中させている。

音色は風に乗り、千霧達の部屋まで響いてきた。


「あ……この曲、藍だ」


「え?」


「聴こえない?──ほら、胡弓の音。私、彼の奏でる胡弓がとても好きなんだ」


千霧は、その幽かな音色に、そっと耳を預けた。