睡恋─彩國演武─


藍もそうだった。

頼る場所も無く、孤独に苛まれ、いつしか此処へ辿り着いた。


「僕は、廓を出ていくよ。──もう逃げるのは終わりにしたいんだ。随分勝手で申し訳ないけど、決めたんだ」


藍が深く考えて出した結論だった。

初めて逢った時、彼は千霧を龍と認められなかった。

どうしても受け入れられず、ただ拒絶した。

怖かったのかもしれない。

あの真っ直ぐな瞳で見つめられると、自分の後ろめたい本性を見透かされているようで。

千霧はよく、人の態度を伺うような素振りを見せる。

そういった素振りは、深く人を恐れ、警戒している証だ。

その対象になっている自分への嫌悪が渦巻いて、一層、こんな惨めな思いをさせた千霧を憎んだ。

けれど、そんな嫌悪の塊に千霧は言った。


『貴方の心は、きっと澄んでいる』


汚れきった自分に降ってきた、偽りのない言葉。

千霧は本気で、そう言ってくれたのに。


『嫌いなんだよね』


あれは、本当は己に向けて発した言葉だった。

嫌いで嫌いで、どうしようもなくて。

また、人を傷付ける。