睡恋─彩國演武─


全てを聞き終えると、藍は静かに口を開いた。

「父上の失態は、全て僕の責任だ。脩蛇に国を傾けられたなんて……情けない」

「藍王子、どうか白樹にお戻り下さい。国の乱れを正せるのは貴方様だけ。白王もそれを望んでおられます」

「父上が──?」


藍の紅い瞳が曇る。

父にはとても会いたい。

だが、それには障害がある。

藍にとって、大きすぎる心の傷が。

胸がずくずくと軋んだ。


「僕は──」


帰りたい、と素直に言えるなら、どんなに楽になれるだろう。

目の前にいる、真っ直ぐな瞳の正直な少年が、どうしようもなく羨ましい。


「……まだ、帰れない」


返事をした藍の声は、少しだけ震えていた。

それに対し、由良は明るい声で、藍の予想に反することを口にした。


「じゃあ俺、待ちますよ。藍王子がいつか帰れる時まで。ね、空良も賛成だろ?」


「……由良には敵わないな。そうですね、それがいいです。藍様、どうか──」


二人の様子に、アイも藍を見て微笑した。


「想定外だって思ってるでしょう」

「うん、想定外だ。由良もきっと、僕の運命を変える可能性になってくれる」

藍は頷き、手を差し出した。


「いつになるか、わからないよ?」


「それならいつまでだって、藍王子を待ち続けるだけです」


由良がその手をとり、誓いの握手を交わした時、藍の背中から真っ赤な翼が広がった。