睡恋─彩國演武─


呉羽は驚きつつも、アイの言う通りに頷いた。


「蛙の異形ですか……悪趣味ですね」


「ほんとに……女の次に気持ち悪いよ」


背中の大剣を引き抜き、アイに絡む舌を切り裂く。

そこから多量の血が溢れ、辺りに飛び散った。


「──舐められたもんだよ」


異形の体液で足が濡れたアイは、ちいさく舌打ちしてから距離をとった。


苦しみ悶える異形の姿を、楽しむよう瞳に捉える。


「水が無いから干からびそう?」


アイは両手に、炎で二つの圈(けん)を造り出し、異形に向けて素早く投げた。


「焼けちゃいな」


圈は勢いよく異形の首にめり込み、そのまま貫いて再びアイの手へと戻ってくる。


「……おーわりっと」


重い音を立てて異形の首が崩れ落ちると、その身体が光となり、枯れた泉の水が戻る。


アイの戦いは、舞いだ。

美しく妖艶、そして、残酷な。

呉羽は息を飲んだ。

これこそが、本来の朱雀。

アイと再開したとき、感じた違和感はこれのせいだった。

本来の朱雀とは、残虐で恐ろしいもの。

今のアイが、“それ”である。


「どうしたの?久しぶりに会った僕が怖い?呉羽」


「──そんなことないですよ。ただ、驚いてるんです」


容姿まで異なっている。

金髪、赤眼、白い肌、華奢な身体。

それは今までと同じだ。

だが、決定的に違うのは──。