鈍器で胸をえぐられたような感覚。
アイの言葉が、頭の中で何度も反響する。
「──優しさに溺れて、四聖に頼るだけの龍なんて、アタシには必要ない」
愕然とする千霧の脇をすり抜け、アイは廻廊の奥へ消えていった。
千霧は己の足から伝わる、じんわりとした痛みが次第に胸へと移っていくのを感じながら、その場に立ち尽くした。
一方、アイは一足早く部屋へ戻っていた。
呉羽の姿はなく、静かに眠っている由良の姿だけが確認できる。
「ちょっと由良、いつまで寝てるのよ……」
なんとなく暇をもてあましたので由良を揺すり起こそうと近づいた。
──息が、荒い。
額に手を当てて、驚愕した。
「かなり熱があるじゃないの。どうして──」
アイは立ち上がると、店番の所まで急いだ。
「天祢(あまね)!水と桶、あと清潔な布をアタシの部屋まで持ってきて!あと風邪薬!」
「は、はい!すぐに用意します!」
店番の少年に告げ、アイは適当な布に水を染み込ませて部屋へ戻る。
それを由良の額に当てると一息ついた。
「身近な一人を救えなくちゃ、彩國を救うなんて無理なのよ──」
「姐さん。頼まれたもの、揃えて参りました」
「ありがとう。そこに置いといて」
アイが指定すると、天祢は道具を置いて由良を見た。
「──ご病気、なんですか?」



