睡恋─彩國演武─






辺りが、明るい。


「お目覚めですか?」


目の前で嬉しそうに微笑んでいる呉羽に、千霧は違和感をおぼえた。


「──夢?」


胡弓を弾いていた彼を引き止めた時から、記憶の糸がプツリと途切れてしまっている。

「彼は誰だか判らない。判らないのが、当たり前……」

青年の言葉はどれも印象的で、千霧の胸に深く焼き付いていた。

夢とは思えないほど、鮮明に。

記憶が辿ろうとしていると、廊下の方から元気の良い足音が聞こえてきた。

襖が勢いよく開けられ、アイが飛び込んでくる。

「龍、目が覚めたのね!」

アイは嬉しそうに千霧に駆け寄ると、呉羽の隣に座った。

「ええと……」

反応に困っている千霧に気付いたのか、彼女は自身の胸に手を当てた。


「起きてる時は初めましてかな。──アタシはアイ。四聖の朱雀で、白虎とはずっと一緒だったの。ちなみに、貴方の傷を治したのも、アタシだよ」

微笑みながら自己紹介するアイに、千霧も自然と力が抜けていた。

「そうでしたか……色々とありがとうございます。あの、朱雀って……」

呉羽を見ると、彼は横に首を振った。

それに、アイが言葉を付け足す。