戻ってきた由良の姿を見て、呉羽は目を丸くした。
「ずいぶん盛大に顔を洗ってきたんですねぇ」
「はは……そうみたいです。──っくしゅん」
「風邪をひくといけませんから、着替えて暖まった方がいいですね」
呉羽は自分の上着を由良にかけてやると、火をおこした。
由良は小さくまるまって火にあたりながら、膝を抱えた。
(あれ、呉羽様の上着って、良い匂いがする……香?)
「呉羽様って、お香とか好きなんですか?」
「いえ。あまり匂いの強いものは得意じゃないので。どうして?」
「えっ?ええと、なんでもないんです。気にしないで下さい」
身体が暖まるにつれて、瞼が重くなってくる。
由良の目が完全に閉じると、呉羽は布団を敷いて、軽い体をそこへ運んでやった。
「玄武はまだまだ子供ですね」
まだ幼さが見え隠れしている寝顔を眺めて、彼は優しく微笑んだ。



