王の表情にはぞっとする。
そこにあるのは生理的な嫌悪。
「気が強いな……。ますます気に入ったぞ……」
王は千霧に一歩近づこうとするが。
「白王の名を汚したければ近づけば良い。でも貴方の誇りは地に堕ちますよ」
その言葉に、春牧が慌てて必死に王を制止する。
「ここまで言われては……!王の御名に傷が……。誰ぞ、この者を牢へ!」
千霧は両腕を乱暴に掴まれると、呉羽と由良から引き離された。
「くっ──…」
指が食い込む痛み。
呉羽も由良も、衛兵に囲まれていて迂濶に動けない。
千霧はチラリと呉羽に目配せする。
“大丈夫”と。
「早く来い!」
衛兵に急かされ、広間の外へ出される。
背後で鈍い音をたてて扉が閉まった。
そのまま、並んだ牢へと連れていかれ、暗くて狭い部屋へ閉じ込められる。
幸い、窓から微かな光が入ってくるので周りの状況が確認できた。
千霧の居る牢の他に、四部屋ほどの牢が繋がっている。
現在は、千霧の他には誰も居ないようだが。
「お前は明日の祈りの儀式まで、此処で過ごすのだ。大人しく王の妾になれば良かったものを……馬鹿な奴だ」
「……賢明の間違いでは?あんな色惚けの妾になってどうなる」



