「どういうつもり? なんで来たのよ。稲葉まで連れてきて!」


 近くの公園に場所を移し、俺も自転車を押してそれについていく。

 公園に着くまでの間、誰も喋らなかった。


「稲葉くんって、愛ちゃんのことが好きなの?」


 誰もいない真昼の公園で、三笠が悪意に満ちた眼差しを向けてくる。


「でも残念。この女ってレズなんだよ! 女のくせに、女のわたしが好きなんだって!」


 自嘲じみた、引きつった笑みを浮かべて叫ぶ。


「だからなんだよ。俺だって…………青山の事が好きだよ」


 同性が好きで、何が悪い。


「う、そ……」


 青山が好きだという俺の言葉が、篠塚が言う三笠が好きだと同じということに、三笠は言葉も失い後ずさる。

 篠塚も、まさか俺が三笠にカミングアウトするとは思いもしなかったのだろう、目を丸くしていた。