俺はなぐさめるように、すがりつくその小さな背中をなでる。

 弟たちをあやしているのと同じようなものだけど、誰かに見られたらきっとまた誤解されてしまうだろう。

 それでも、よかった。

 この優しくて強がりな女の子の涙が癒されるのなら、誤解されるぐらいヘでもない。

 俺の胸ぐらい、いくらでも貸そう。

 篠塚のすすり泣く声を聞きながら、俺は宙に視線をさ迷わせる。

 気がかりなことが、一つある。

 階段を駆け下りてきた三笠の、あの表情。

 あれが瞼に焼きついて離れない。

 水面に落とした一滴の墨みたいに、不安が胸に広がっていく。

 拭い去れないシミが、確かにそこにはある。

 篠塚の気持ちを受け入れた三笠舞。

 篠塚の本当の気持ちを知ってもなお、ずっと友達だと言った。

 それは、本当なのだろうか?

 俺のわきをすり抜け、廊下を駆けて行った三笠のあの表情。

 俺が見たあの表情は――――




 嫌悪で満ちていた。