「大丈夫?」


 心配した青山が手を差し出すが、三笠はその手をつかむことなく立ち上がると、また駆けていってしまった。


「どうしたんだろ、三笠」


 首を傾げながら三笠を見送る青山に、俺は曖昧な表情を浮かべる。


「さあ、どうしたんだろうなぁ……」


 どうやら、告白タイムは終わったらしい。


「そうそう。圭一、篠塚さんをあんまり泣かせんなよ」


 引き留める理由もなくなり、青山は階段を下りて行く。

 その途中で俺を振り返り、そう釘を刺してきた。

 クリスマスの日に見せた、あの眼差しが再び向けられる。

 心臓が凍りつき、息が出来ないような心持ちにさせる。


「なんで俺、篠塚と一緒にいるんだろ」


 篠塚といなかったら、青山にあんな眼差しを向けられることはなかっただろう。

 俺と篠塚が付き合っているなんて誤解も生まれなかった。

 二人っきりで喋ったり触れたりした感慨も虚しく、天井を仰ぐ。

 天井の向こうには、篠塚がいるはずだ。

 ガシガシと頭を掻くと、階段へ足を踏み出す。

 仕方がない、迎えに行くか。