「だだだだだ駄目だ! こっちに来るな、青山!」


 立ち上がり、青山の方に手のひらを向けて制止する。


「なに、コンタクトでも落とした? 探すの手伝おうか?」


 青山は素直に立ち止まってくれただけでなく、事情を推測してそう申し出てくれさえした。


「い、いい。大丈夫だから……こっちには、来るな!」


 来られたら、篠塚と三笠の話し声が聞こえてしまうかもしれない。特に、さっきみたいな告白をはっきり喋られたりしたらたまらない。


「コンタクトじゃないのか?」

「ああ、違う違う」


 決して階段には近づかないように青山に駆け寄り、肩をつかむ。


「青山、今から帰りか?」

「いや、部活だけど」

「そうか、部活か。そういえば部長になったんだってな。おめでとう」

「ありがとう。青山まで知ってるんだな。なんだか照れるよ」


 かすかに頬を染め照れ笑いを浮かべる青山に、こちらまで赤くなりそうだ。

 それも、真っ赤に。

 なんだか今の俺、物凄くテンパってる気がする。