「稲葉はこれからどうするの?」
「俺はもう帰るよ。篠塚は?」
「んー……」
まだまだ遊び足りない気もする。
けど、舞ら帰ってしまったし一人遊びは好きじゃない。
「私も帰る」
「じゃあ、送っていってやろうか? 後ろ乗れよ」
店の入り口すぐわきにある駐輪スペースを示し、そこに止めてあった自転車の鍵を外した。
「いいよいいよ」
送っていってもらうなんてさすがにダメだと思い、首を横に振る。
「いいって。それとも……篠塚って、そんなに重いの?」
「重くない!」
思わず稲葉を突き飛ばし、危うく駐輪場の自転車でドミノ倒しをしてしまいそうになった。
「そういうことじゃなくって、誰かに見られたら誤解されるでしょ」
男女で自転車の二人乗りなんて、いかにも付き合ってますって感じだ。
「大丈夫だって、人少ない道通るし」
「でもな〜」
「平気、平気」
稲葉は私ほどそういうことを気にしていないのか、執拗に勧めてくる。
「うーん……じゃあ、お願いしようかな」
学校以外で稲葉と会うなんて初めてだったから、私はちょっと浮かれているのかもしれない。
舞ともデートして、美味しいパフェ食べて、上機嫌。
だから、頷いてしまった。
正直、電車代が浮くのは有り難いしね。