in theクローゼット


「あ」


 突然、舞が短く言葉を上げた。

 どうしたのかと思って顔をあげると、舞は椅子に掛けていたコートから震える携帯電話を取り出していた。


「ごめん、愛ちゃん。親がこれから帰ってくるって言うからさ……」

「うん、いいよ。わかった。昨日の埋め合わせしてもらってきなよ」


 携帯電話を操作して、留守電を聞いた舞がみなを言う前に私は舞を送り出す。

 ちょっと嬉しそうな舞の表情に、私は笑顔になる。


「本当にごめんね!」

「いいって、気にしないで。ありがとう、今日は楽しかったよ」

「わたしも楽しかった。これ、大事にするね」


 ガッツポーズをするようにさっきのブレスレッドを見せてくる舞に、私もおんなじポーズをしてブレスレットをみせる。


「あっ、稲葉くん。私の席使っていいからね〜」


 コートを引っつかんでヒラヒラ手を振りながら店を出ていく。

 私と稲葉のことを言い訳していなかったことに気が付いたのは、舞が出て行った店の扉が閉まってからだった。

 しまった。

 テーブルには、再び頭を抱える私と、ただ突っ立っているだけの稲葉が残された。