in theクローゼット


「あれ、篠塚じゃん!」

「い、稲葉!」


 名前を呼ばれてようやく舞から視線を逸らした。

 その先にあった見知った顔に、私は思わず頭を抱えてしまう。


「あ、稲葉くんだ〜」


 舞も稲葉に気がついて、ひらひらと手を振っている。

 なんでこのタイミングで現れたりするんだろう。

 舞とのデートをじゃましやがって。

 最悪だ。


「あれ? でも、愛ちゃんと稲葉くんってそんな仲良かったっけ?」


 稲葉が気安く声をかけたりするから、舞が不思議そうに首をかしげている。

 本当に、最悪だ。

 学校で水谷先生にエレベーターの中にいるのを見つかったときとはわけが違う。

 あの時は稲葉が泣いていたせいで妙な誤解を受けかけたが、そのおかげで一番嫌な誤解は受けずに済んだ。

 ボーイミーツガールなんて、クソくらえだ。