「愛ちゃんって、昨日なにしてた?」

「え? えっと……昼は年賀状書いて、部屋の掃除して、夜はお父さんが買ってきたケーキ食べてたけど」


 改札を通ってホームに下りる階段を歩きながら、それがどうしたのかと首を傾げる。

 そうして見た舞の顔は、曇っていた。


「どうかしたの?」

「いいよね、愛ちゃんのお父さんって優しくて。うちのお父さんもお母さんも、昨日は珍しく早く帰ってくるって言うから待ってたのに……結局帰ってきたの、夜中の二時だよ!」


 寒いのか、コートの襟に顔をうずめるようにしてつぶやかれる。

 舞の家にある、大きなクリスマスツリー。

 卓上ツリーしかない私は小学生の頃それを羨ましがったけれど、舞はいつも一人ぼっちでそのツリーの前に座っていたんだ。

 私は小さなツリーだけど、お父さんとケーキを食べながら囲っていた。

 人一倍寂しがり屋のそのわけを私は知っている。


「暇なら私を呼んでよ。塾も行ってないし、結構暇してるんだ。真夜中でも、電話一本で駆けつけるよ?」


 私が明るく笑ってみせると、階段を降り終った舞が振り返って微笑んだ。


「ありがとう、愛ちゃん」