校舎裏のゴミ捨て場は屋根があるだけの場所だった。
 屋根の下に、燃えるゴミと燃えないゴミの袋が二つの山を作っている。

 ゴミ捨て場は、やっぱり少し臭う。
 この臭いがあるから必要以外は誰も近づかないし、必要以上に留まらない。


「あれ、篠塚」


 そんな場所に、たった今ゴミを捨て終えたらしい稲葉が立っていた。


「掃除終わったのか?」

「うん。これでお仕舞い」


 私は小屋の外の雑草山にゴミ袋の中身をぶちまける。
 本当はコンポストの中に入れるんだけど、あふれ返ってコンポストはもう見えない。

 空になったゴミ袋は燃えないゴミの山に投げる。
 これも本当は山の下にゴミ箱があるんだけど、もう誰も気にしてない。


「よし、完了」


 手を叩いて汚れを落とすと、軍手を外してコートのポケットに入れる。
 これは後で水谷先生に返却すればよかった。


「そういえば、稲葉って教室の当番だったよね?」


 誰もいないゴミ捨て場なので、人目を気にせず稲葉に声をかける。


「そうだけど」


 それがどうしたという風に首を傾げる稲葉に、私はおずおずと切り出した。


「舞、どうしてた?」

「なんだ、そんなことかよ。元気にホウキ振り回してたよ」

「ホウキ……?」

「水無瀬がサボってたから」

「ああ……。まあ、元気ならいいや。無理してるんじゃないかって心配してから」


 その様子を想像して苦笑しながらも、元気な様子にホッと胸を撫で下ろす。


「なによ」


 ふと稲葉を見ると、なぜか稲葉がニヤニヤしていた。
 それを睨み、不機嫌を一面に押し出した声を出す。