「でも、気持ちは嬉しかった。まさか、性別を超えて愛されるなんてな」


 少し冗談めかして笑う優しさが、失恋の傷口にしみ入る。

 気まずさを残さないようにしたり、嬉しいと言ってくれたり、青山らしい誠実な答えだ。

 終業式のあの日に見た告白のまま。

 俺が男だとかそういうことを抜きにして、分け隔てなく答えてくれた。


 応えられないのに、ますます惚れさせて……どうするんだよ、青山。


 篠塚が三笠に望んだ気持ちを、俺は青山から与えられた。

 これ以上を望むのは、欲張りすぎだ。


「……殴ったことと、キ、キスしたことを水に流してくれたら、許すよ」


 冗談めかされたから、軽く返す。

 けど、実は結構切実なお願いでもあったりする。

 友達にとまではいかなくても、ただのクラスメイトぐらいには留まりたかった。


「……わ、わかった。気にしないように努める」


 俺とのキスを思い出したんだろう。

 青山が真っ赤になって言いよどむ。

 結構クールな青山に、そういう顔をさせられたことがなんだか誇らしかった。

 俺の気持ちは、ちゃんと響いてる。