涙が出そうなほど笑い会う。


「あー可笑しっ」


 って篠塚が言ったときだった。

 悲鳴が聞こえたのは。


 「きゃー」


 細く聞こえた悲鳴にグラウンドを見下ろすと、学ランとセーラー服を着た人影が一つずつ。

 こちらを見上げて何事か叫んでいるみたいだった。


「なんだ?」

「あれ、香坂さんと水無瀬だ」


 フェンスにしがみついたままの篠塚が、二人を判別する。

 言われてみたら、香坂と水無瀬に見えなくもない。


「何言ってんだろ」

「さあ……よく聞こえないね」


 香坂と水無瀬らしき人影は身振り手振りなにかを訴えてる。


「何なんだろね〜」

「何なんだろな〜」


 しかしさっぱり伝わらなかった。

 距離がありすぎて、言葉は拡散して雑音にしか聞こえない。

 俺たちの青春の叫びもこんな風だったんだろうか……

 しばらくして、二人は諦めた様子で校舎の中に消えていく。


「なんだったんだろうな」

「なんだったんだろうね」


 一時間目の授業が始まる鐘が鳴っても、俺たちはそのままグラウンドを眺めていた。