「机に落書きしたの、先輩たちですか?」
トイレの床から起き上がり、気になっていたことを口にする。
私がレズビアンだって知ってるのは、舞と青山と稲葉だけ。
でも、その三人うちの誰かがあんなことしたとは到底思えない。
「答えてください!」
私が睨み返しても、三人は更に不機嫌になるだけだった。
「はあ、何それ?」
「ウチらはそんなことやってないし」
「なにこれ、言いがかりぃ……?」
「マジムカつく」
私を無視して三人は話し始め、一人が合点がいったように手を叩いた。
「わかった! アレじゃない? 二年のがさー昨日、そんな感じのこと言ってたじゃん」
「ああ、そういえば……」
再び腕を組んだ女が私に目を向けて、薄い唇に笑みを浮かべた。
その微笑を見た瞬間、氷柱を刺されたかのような寒気が走った。
「アンタ、レズって本当?」
「…………!」
絶句した。
あの机の落書きがこの先輩たちの仕業じゃなくても、この人たちは知っている。
この人たちは思っている。
あの机に書かれていたことと同じ事を。