青山がなにかを言っている。

 でも、 頭に血が昇って、血潮の音でよく聞こえない。

 へらへら笑って平静を装って、自分がそれになんと答えているのかもよくわからない。

 適当に頷いて、さっさと話を終わらせて、青山の目の前から消えてしまいたい。

 青山に好きな人がいるってことは、あのゴミ捨て場の裏で知っていた。

 凄い、ショックだった。

 でも、相手が誰かも分からずに、実感がわいていなかったのも本当のところだった。

 でも、まさかソレが篠塚だったなんて。

 青山の手の中にあるチョコレートが、酷く惨めに見えた。

 篠塚に罪はないと分かっていても、憎しみが走る。

 でも、篠塚はまだ三笠が好きなんだ。

 青山の恋が叶わないことを俺は知っている。

 俺の好きな青山を、篠塚は振るんだ。


「篠塚……!」


 青山との話を終え、半ば逃げるように渡り廊下を後にする。

 戸を引いたところで、うずくまっている篠塚と目が合った。

 何も知らずに笑いかけてくる篠塚を目にしたとたん、嫉妬に似た怒りが胸を占める。

 俺は、篠塚の手を振り払っていた。


「悪い。今……話し掛けんな」


 言葉が刺を孕むのを止められなかった。