勝手に古今和歌集

「夏木さん、俺の消しゴム使っていいよ」






―――そんな甘い考え、やっぱり通用しなかった。




犬飼くんは不気味な笑みを浮かべつつ、すうっと消しゴムを差し出してきたのだ。






「俺ふたつ持ってるから、今日一日貸してあげるよ」






ひとの厚意はしっかり受け取りなさい、というマトモな教育を親から施されてきたあたし。



なので、「ありがと!犬飼くん」とにっこり消しゴムを受け取った。





犬飼くんはにやっと笑い、「夏木さんってシャイだよね……」という謎の言葉を残して前を向き直った。






―――シャイなんかじゃねーよ!!




いいように解釈すんなっ!!





と内心で怒りを燃え立たせつつ、あたしは原田くんに消しゴムを返却し、泣く泣く犬飼くんの消しゴムを愛用する羽目になったのだった。