短編集『秋が降る』

もう、佐藤さんは私を見ないで天井に視線を向けていた。

私は立ち上がると、リビングの棚を見た。

そうだ・・・。

ひとりじゃ無理でも、なにか武器があれば・・・?

人目につかないように、棚の扉をこっそり開けてみる。

プラスチックでできたコップや、トイレットペーパーなどの消耗品が並んでいる中、一番下の引き出しにそれはあった。

ガラスでできた花瓶。


これなら、ひょっとして・・・。


それを服に隠すと、足早に部屋に戻る。