「聞こえない」
首をふって言うが、またパクパクと動かす。
「息を吐きながら言うの。そうしたら声になるから」
小さい声で言うと、今度は息を吐き出す音にまじって声が聞こえた。
「・・・て」
「え? もう1回」
佐藤さんは息を吸い込むように肺をふくらませると、言った。
「に・げ・て」
「あなた・・・逃げて、って言っているの?」
私はその目を見た。
彼は静かに少しだけうなずいた。
「無理よ」
私は頭をかかえてうめくように言葉にした。
「カナさんも死んじゃった・・・。私ひとりじゃ無理。どうやって逃げるって言うのよ」
首をふって言うが、またパクパクと動かす。
「息を吐きながら言うの。そうしたら声になるから」
小さい声で言うと、今度は息を吐き出す音にまじって声が聞こえた。
「・・・て」
「え? もう1回」
佐藤さんは息を吸い込むように肺をふくらませると、言った。
「に・げ・て」
「あなた・・・逃げて、って言っているの?」
私はその目を見た。
彼は静かに少しだけうなずいた。
「無理よ」
私は頭をかかえてうめくように言葉にした。
「カナさんも死んじゃった・・・。私ひとりじゃ無理。どうやって逃げるって言うのよ」


