短編集『秋が降る』

スカイの一人が、私を見つけて近づいてくる。

「飯野さん、もう良くなったんですか?」

「・・・」

「歩けますか?」

差し出そうとする手を振り払う。

「私に触らないで」

ああ・・・、あの日新しいお母さんに言った言葉と同じ。

だから、こんなところに入れられたんだ。

スカイは狼狽したように顔を真っ赤にし、すぐに足早に去ってゆく。

そんなことより、カナさん・・・。

目的の部屋の前まで来た時、私はすべて悟ってしまった。

カナさんの部屋の扉は大きく開けられ、そこにはマットレスのない枠だけのベッドが置いてあったから。