短編集『秋が降る』

私のこと?

何を言ってるの!?

私なんかじゃない。今はカナさんを!

「とりあえず、落ち着かせます」
杉浦先生がなにかを取り出す。

暗闇の中で光るそれは、注射器のさきの針。

「いやだ、やめて!」

「腕を押さえなさい」

杉浦先生の言葉通りに動くスカイ。

次の瞬間、腕に突き刺すように注射器が当てられた。

「すぐに落ち着きますから」
そう言うと、杉浦先生はきびすを返し、カナさんの部屋の方向へ。

「やめて、誰か、誰かぁ!」
叫びながらも、徐々にその声が遠くに聞こえてくる。