短編集『秋が降る』

目が見開かれている。
舌がだらんと口から飛び出ているのがわかった。

「うそ・・・うそでしょう! カナさん、カナさんっ!!」

突然後ろからも強い力が加わった。

「やめて、離して!」

引きづられるように自分の部屋の前へ。
「誰か、誰か!」
大声で助けを求めるが、どの部屋も閉ざされたまま。

「君・・・」
ふいに声がかかり、そちらを向くと杉浦先生が立っていた。
寝ているところを起こされたのか、白衣も着ていない。

「カナさんを、カナさんを助けてください!」
あふれる涙をぬぐうこともできずに、声をあげた。

「先生、興奮状態です」
押さえているスカイが冷淡に言う。