短編集『秋が降る』

夕食後すぐに部屋に戻って、胃の中の物を吐き出した私はそれから暗闇の中じっとその時を待った。

たまに見回りの人がのぞきに来た時は、寝ているふりをしてやりすごす。

今夜、逃げ出すにしてもどの方法がいいのだろう。

非常ベルは、確かに今のカナさんだと逃げきれないかもしれない。

やはり、スカイからカギを奪うのがいちばんかも。

でも、どうやって?

そんなことばかり考えていると、眠気はまったくやってくる気配をみせない。
むしろ、遠足前のようなドキドキが止まらない。

「今、何時だろう?」

部屋に時計がないので、時間がわからない。