短編集『秋が降る』

「大丈夫。部屋から外は見えないもの。ここで、景色を見ながら死ぬの」
そう言って私を見た。

どんな強い薬で実験されているのか・・・。

そして、それがそのまま私の行く末を暗示しているかのよう。

「ダメです。一緒に逃げましょう」
私がそうキッパリ言うと、カナさんはおかしそうに笑った。

しばらく笑い、そして咳をしたあとカナさんは私を見た。

「だから私は無理。足手まといになりたくないのよ」

「そんなことありません! それに私って相当な方向音痴なんです。きっと走って逃げてもいつの間にかここに戻ってきちゃいそうだし」

どうしてもカナさんと一緒に逃げたかった。
残していくなんてできない。

「そうね・・・。じゃあ、今夜起こしに来て。夜中の2時くらいならスカイも眠いはずだから」