短編集『秋が降る』

「・・・それって」

言いかけた私を制し、カナさんは続ける。
「お父さんとお母さんがあなたを差し出したのよ」

「まさか」
そう言いながらも私はカナさんの言葉を待っている。

「子供がいなくなって心配しない親はいない。こういう秘密裏の施設がそんな危険なことはしない。つまり、親の承諾は得ているわけ」


頭が。

また、頭痛が。


「でも、でもっ」

「お父さんたちと、なにかあったんじゃない? いなくなってほしい、と思わせるような出来事が?」

お見合いをイヤがったから?