短編集『秋が降る』

「外に行きたい・・・」
そう言ってみる。

カナさんも同じように、
「そうね」
と短く答えた。

また木が葉を落とした。
ここでは風を感じることもできない。

「お父さん・・・助けにきてくれないかな」

その言葉に、カナさんは私を見る。
「それ、本気?」

「・・・だって。心配していると思う」

「・・・」

「違うんですか?」
沈黙が気になり、私は尋ねた。

カナさんは、首を大きく振ると、
「残念ながら」
と言った。