短編集『秋が降る』

「でも、私は会えてよかった。拓斗、すっごく優しかったから」

昨日から私は幸せだった。

拓斗がこんなに私を思ってくれていることを知ったから。

「俺はいつも変わらないぞ」
少し落ち着いてきたのか、拓斗が強がった。

そう、それでいい。

最後は笑顔の拓斗を見たい。

どんどん朝陽が町を照らす。
自分の姿がそれとともに消えてゆく。

「拓斗、ありがとう」
そう言うと、拓斗は眉にまた力を入れる。
「そんな悲しいこと言うなよ」

「でも、言わなきゃ。私はもう行かなくちゃならないみたい」
なるべく軽い口調で言ってみせるが、唇が震えている。

「行くなよ。ずっとそばにいてくれよ」
また泣き顔になる拓斗。