短編集『秋が降る』

拓斗とこんな形で離れるなんて。

神様、私をもとに戻してください。

私から拓斗を奪わないでください。

心で祈りながらも、それが叶わないことを私は知っていた。

「あ」
ふいに寒気が取れた感覚。

胸のあたりに急に暖かさが訪れた時、私は自分にはもう時間が残されていない事を理解した。

拓斗を見た。
彼は子供のように泣きじゃくっている。

・・・このままじゃいけない。

逝く方よりきっと、残されたほうがつらいから。

「拓斗」
私は声をかけた。もう声も震えなかった。

顔をゆがませながら拓斗は私を見た。