短編集『秋が降る』

「そう・・・」

ふと自分の両手が視界に入った。

朝焼けに染まる中、私の手のひらは薄く透けていた。


「私、死んじゃってた?」
そう尋ねると、拓斗はこれ以上ないくらい悲しい顔をした。

それが答え・・・。

「なんか夢みたい」
そうつぶやく。

白い息が溶けてゆく。

「夢なら、夢ならどんなにいいか!」
叫ぶように言って、拓斗は私をまた抱きしめようとした。
でも、その手は私の体をすり抜けた。
「っ・・・」

「夢じゃないんだね。私はもう、死んじゃっ・・・」
声にならない。涙がどんどんあふれてきた。

「彩花っ」