短編集『秋が降る』

「ああ・・・」
気づけば荒い息をしていた。

拓斗が黙って私を見ている。

「跳ねられたのは、私だったんだ・・・」

他人事だと思っていた。

でも、本当は自分が車に跳ねられていたんだ・・・。

「彩花」
そう言って唇をかみしめる拓斗。

「拓斗、昨日はバイトじゃなかったの?」
ゆるゆると顔を上げてそう尋ねた。

拓斗は躊躇しながらも、うなずいた。

「ああ。彩花のお母さんから連絡があって・・・」

「お母さんから?」

「彩花が事故にあったって連絡が来て、病院へ行ってた」