短編集『秋が降る』

「悪かったな。俺がそばにいなくて、悪かった」

「は?」
その言葉に私は拓斗の胸から離れる。
「なに言ってんのさっきから。まるで私が事故にあったみたいじゃない」

両目からこぼれる涙はそのままに、私を見つめる拓斗。

「・・・え?」

寒くて歯がガタガタと鳴りだす。

・・・どういうこと?

「彩花・・・」
言葉を絞り出すように拓斗は言った。
苦しそうに顔をゆがめている。

「守れなくてごめん」

「ねぇ、拓斗。やめてよ! そういう冗談やめてよ!」

「わる・・・かっ・・・た」

うつむき嗚咽を漏らす。