短編集『秋が降る』

公園につくと、いつものベンチに座った。

ここからは町並みが見渡せる。
夜空の端に、朝の訪れを感じる光の線がうっすら見える。

「寒くないか?」
拓斗がそう尋ねた。

「ちょっと寒いね」
そう答えると、拓斗の右手が私の肩を抱き寄せた。

それだけで少し暖かい。

拓斗の息遣いが左の耳に聞こえる。

本当にどうしちゃったんだろう?

これまでこんなに優しくされたことなんてなかった。

いつも私が追いかけてばかりいる恋だと思っていた。
子供扱いされ、すねると「大人だろ、我慢しろ」なんて言われたり。
優しくしてほしいと思うほどに、冷たさを感じていたのに。


何か違和感がある。