短編集『秋が降る』

まだ薄暗い道を拓斗と歩く。

静かでいて、凛とした空気が気持ちいい。

「彩花、離れんなよ」

「え?」

「いいから、ほら」
見ると、拓斗が左手を差し出している。

躊躇しながらも私も右手を出すと、ぎゅっと握られた。

なんだか…あったかいな。

高台の公園に続く坂道を、ゆっくりと歩く。

優しさとは裏腹に、時折見る拓斗の表情は何かを怒っているかのように固いのが気になる。

私の視線に気づくと、
「ん?」
と、作る笑顔が無理矢理っぽい。