短編集『秋が降る』

「へ?」

拓斗はニカッと笑顔を作る。
「一緒に思い出の場所、行こうよ」

うん、また展開があやしくなってきた。

思い出の場所とは、最初のデートで行った高台の公園のこと。
それからも、たまにふたりで行っては、そこから見える夕日を眺めてから帰ったりしていた。

「なんで?」

なんとなく行きたくない感じ。

そこでお別れ、ってイヤな想像が・・・。

「また、お前アホなこと考えてるだろ?」
見透かしたかのような拓斗のあきれ顔。

「べ、別に」

「じゃ、行こう。散歩しながら行くにはちょうどいい距離だし」