短編集『秋が降る』

「どうしたの? 怖いって」

こっち見てるんだもん。
一気に目が覚めた。

「いやー、なんか寝顔見てたくってさ」

「キモイ」
素直にそう言うと、拓斗は肩をすくめておどけて見せた。

私も起きて窓辺へ。

「風が秋になったな」
拓斗が外を見て言う。

心地よい冷風が部屋に入ってくる。

「ほんとだね」
まだ暗い夜空の向こうが、徐々に白みだしていた。
「気持ちいい」
目を閉じた。

「なぁ、彩花」

「ん?」

「思い出の場所に行こう」