短編集『秋が降る』

あれ・・・?

なになに?

男って、最後の一夜をともにしてから別れたいもんなの?

眉をしかめている私に拓斗は言う。
「もう、お母さんには許可とったから」

「は? うちに電話したの?」

「うん。美香子が帰ったあと電話しといた。お母さん、快くオッケーしてくれた。俺、信用されてるんだなぁ」
ようやくいつもの拓斗らしい軽い口調。

モヤがかかっていた視界が急に明るくなった。

「拓斗、私と別れたいんじゃないの?」

その言葉に今度は拓斗が眉をよせた。
「何言ってんの、彩花。寝ぼけてんのか?」

「それはこっちのセリフだよ。さっきまでなんかヘンだったじゃん。すっごく怖かったんだからね!」

「別にいつもと一緒だったし」