短編集『秋が降る』

なんだか、拓斗との日々や思い出が、手のひらからこぼれ落ちてゆくみたい。

悲しくて、苦しい。
この場から逃げ出したい。

別れを言われるなら、もっとマシな格好で、もっと髪型とかもちゃんとしてたいし。

こんな方法で別れを知らせるなんて、拓斗、君は冷たいよ。

「帰んなよ」
思わぬ一言に、逆に驚く。

「え?」

「泊まっていけばいいじゃん」
拓斗がそう言う。

「なんで?」
そう尋ねる私の頭を拓斗はポンポンと軽く叩いた。

「一緒にいたいから」

「へ?」

意味がわからず、私は拓斗を見た。