短編集『秋が降る』

再びドアが閉じられる。

今度は、美香子ちゃんがなにか責めているような声が聞こえた。
くぐもった拓斗の声。

ふむふむ・・・。

浮気していることを美香子ちゃんが知って、責められているんだな。
良い気味。

美香子ちゃんとも学校は違うけど、ずいぶん仲良くしてもらった。
恋人と別れるってことは、その家族ともなかなか会えなくなることなんだなぁ。

なんか、みじめ・・・。

ふたりの話し合いは10分くらい続いたんだろう。
やがて、疲れた顔をして拓斗が戻ってきた。

みじめな私は、暗い気持ちでいっぱいだ。

「私・・・帰ろっかな」
意外にも泣きそう。