短編集『秋が降る』

閉まりかけたドアから、
「あ、俺。電話もらっちゃってごめん」
という声が聞こえた。

「ああ・・・」
ため息。

ドアの向こうから、小さな声で、
「うん・・・うん」
と話してる声。

また、ため息。

私は、今夜フラれるんだな。

ああ・・・来るんじゃなかった。
ただ事故を見たことを伝えたかっただけなのに。
不安になって来ちゃっただけなのに。

そんな私に、拓斗は言うんだ。
「終わりにしよう」って。

今の電話・・・。

新しい彼女?
それとも、親友のアドバイス?