短編集『秋が降る』

「彩花」

「え、なに? 痛いよ」

拓斗はハッとした顔をして腕を離した。

「悪い・・・」

「ううん、びっくりしただけ」

なんだろう?
怖いんですけど・・・。

「あがってけよ」
拓斗が部屋を指さした。

「でも・・・」
誰か来ると困るし。
いや、困るのは拓斗でしょ。

「送るからさ」
拓斗は軽く言ってるつもりだろうけど、固い表情のまま。

「うん」
そう言う私もこわばってるかも。